かねてより注目されていた有料出会い系サイト利用料金の「架空・不当請求」裁判……。業者側から大阪の簡易裁判所で「少額訴訟」を起こされていた二十代男性に弁護団が結成され、業者の訴訟取り下げに応じず、訴訟を東京に移送して、法廷で司法の判断に委ねるべくこれまで四度、裁判が行われてきたものです。五度目の平成17年3月22日(火)に東京地方裁判所法廷において、判決が出ましたので報告します。
業者側の訴訟自体を棄却(訴訟法上、裁判所に対する申し立ての内容に理由がないとして排斥)することとなりました。争点の男性がサイトを利用したかどうかについては、使っていないと証言したことと、証拠がないということで、「被告は使っていない」という結論だったこと。また、ただ登録したことを理由に請求することはできないということからも、本件を棄却したということです。
さらに、原告の行為は「詐欺行為」とも評価しうるものであるとして、「被害予防のための報道や裁判制度をも悪用する極めて悪質ないわゆる訴訟詐欺に該当する可能性が高いものといわざるを得ない」としています。
被告の二十代男性側が起こした「反訴」(架空・不当請求に対する請求額110万円慰謝料等請求)については、被告の業者側は、40万円支払えとの判決でした。「反訴」については、明らかにプライバシーの侵害があったこと、通告書を送るなど「恐喝」行為であるが、「本訴」が「未遂」に終わっていること、そもそもが「架空請求」であったことから、「慰謝料(110万円請求のところ)」30万円の支払い、さらに本訴被告(二十代男性)が弁護士等にかかる「弁護費用」10万円の計40万円を、業者に支払を命じたものです。
請求額110万円慰謝料等請求については、「本訴が棄却されることで原告の恐喝行為ないし詐欺行為は未遂で終わる、かつ審理をめぐる過程で被告の受けた精神的苦痛は相当程度慰謝されているものと評価されることをも総合して斟酌すれば、慰謝料額は30万円が相当」とされました。
以上のような判決でした。判決文は16ページにも及び、少額訴訟事件ではめずらしい量の多さで、この事件に対する裁判所の姿勢がうかがえます。
とはいえ、判決は出たものの、判決の際にも業者側が出廷していないため、「40万円を本訴被告(反訴原告)に支払え」とあっても、まさに「絵に描いた餅」ということになります。業者の居場所がわからないのですから、請求のしようもないということなのです。
また、プライバシー侵害を理由に提起した「損害賠償請求訴訟」(請求額110万円)の別訴は今回は触れられませんでした。本訴と反訴のみの判決になっています。
今回の判決からは、こうした「少額訴訟」を利用した「架空・不当請求」は、業者側にとって意味のないもの、つまり「架空請求に対しては放置しておけばいいという通念を逆手に取ったやり方だけれども、そんなことは通用しない」ということがハッキリしたので、今後、業者たちがこうした「少額訴訟」を起こしてくる可能性は低くなるだろうと予測されます。
しかしながら、次々と新たな手口を考え出してくる業者たちですから、油断は禁物です。いずれにしても、「有料出会い系サイト利用料金の架空・不当請求」については、もし万が一、訴状を受け取るなどの事態があった場合には、早急に相談されることをおすすめします。